請求書を発行する時、
以前はよく「1ならびで!」とか言ってましたね。
それは、例えば報酬が手取りで1万円の場合、
クライアントが源泉徴収分を負担してくれるのであれば、源泉徴収額の10%差っ引いた金額が1万円となるように、
少し盛って(笑)、11,111円を請求していました。
手取り金額を0.9で割ればその金額が出ます。(100万未満までね)
H25より復興特別所得税が上乗せにより10.21%に
平成25年1月1日以降より、東日本大震災の復興の為の「復興特別所得税」が導入されました。
源泉徴収的には、
所得税に対し「2.1%」かけた金額
となりました。
よって、
平成25年1月1日以降は 10% ではなく
源泉徴収額は「10.21%」
となったわけです。
そのため「○ならび」という言葉が使えなくなりました。
前述の例なら 0.9で割った 11,111円 ではなく、0.8979で割った金額 11,137円 となります。
No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|源泉所得税|国税庁
「手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法」
源泉税と消費税
さて、
今まで話してきたことには消費税が含まれていません。
消費税を考える場合、源泉税はどうなるのか?
計算で重複すると税金が2重になりますね?
手取り額を源泉分差っ引いた金額を考える場合
「報酬手取り額 ÷ 0.8979」に消費税がかかるのか?
はたまた「報酬手取り額」のみに消費税がかかるのか?
悩ましいです。
原則、消費税は「売上」に対して発動するもの。
そして、
報酬・料金等の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下、「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、
原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、
その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。
出典: No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|源泉所得税|国税庁
これらを踏まえて例を交えながらどう対応するかまとめてみました。
報酬単価に消費税が含まってない
基本的に、報酬額と消費税が明確に分かれている場合は、
消費税を含めていない報酬金額に10.21%をかけて源泉徴収額を計算します。
【例1】報酬が20,000円(消費税別)
・報酬 20,000円
→つまり売上は 20,000円 で計算 (←消費税、源泉税はこの数字を使う)
・消費税(8%) 1,600円 (20,000×0.08)
・源泉税(10.21%) 2,042円 (20,000×0.1021)
→請求金額 21,600円 (20,000+1,600)
————————————————————————————————
★実際振込まれる金額 19,558円 (21,600-2,042)
【例2】源泉徴収分はクライアント負担、報酬手取りが20,000円(消費税別)
・手取り報酬 20,000円
・実際の報酬はクライアント負担の源泉徴収分も加え 22,274円 (20,000÷0.8979)
→つまり売上は 22,274円 (←消費税、源泉税はこの数字を使う)
・消費税(8%) 1,781円 (22,274×0.08)
・源泉税(10.21%) 2,274円 (22,274×0.1021)
→請求金額 24,055円 (22,274+1,781)
————————————————————————————————
★実際振込まれる金額 21,781円 (24,055-2,274)
※同じ2万円でも、経理上では源泉税クライアント負担分は売上が増加。(20,000円→22,274)
よって消費税額も増加。(1,600円→1,781円)
報酬が税込価格
あらかじめ報酬金額に消費税や地方消費税が既に含まれている場合は、
消費税込みの金額に10.21%をかけて源泉徴収額を計算します。
あと、理不尽にも、政治的に大人の事情で消費税が取れない状況の場合は、
経理上、税込み価格と同じ扱いです。
【例3】報酬が20,000円(消費税込)
・報酬(税込み) 20,000円 ←税込のため源泉税はこの数字を使う
・源泉税(10.21%) 2,042円 (20,000×0.1021)
→請求金額 20,000円
————————————————————————————————
★実際振込まれる金額 17,958円 (20,000-2,042)
・消費税(8%) 1,481円 (20,000÷108×8)
→税抜き、つまり売上は 18,519円 (20,000-1,481)
→消費税納税後の手元に残る金額は 16,477円 (17,958-1,481)
★報酬との乖離 △3,523円
【例4】源泉徴収分はクライアント負担、報酬手取りが20,000円(消費税込)
・手取り報酬(税込み) 20,000円
・実際の報酬(税込み) 22,274円 (20,000÷0.8979) ←税込のため源泉税はこの数字を使う
・源泉税(10.21%) 2,274円 (22,274×0.1021)
→請求金額 22,274円
————————————————————————————————
★実際振込まれる金額 20,000円 (22,274-2,274)
・消費税(8%) 1,650円 (22,274÷108×8)
→税抜き、つまり売上は 20,624円 (22,274-1,650)
→消費税納税後の金額 18,350円 (20,000-1,650)
★報酬との乖離 △1,650円
実は、何でもかんでも源泉税がかかるわけではありません!
クリエイティブ系なら
・デザイン料(映像、CM、広告、Web、パッケージなどなど)
・イラストや挿絵の書き下ろし
・写真撮影
・吹き替えやナレーション
・原稿料
・脚本、絵コンテ
・版下
・作曲、編曲
・著作権使用料
詳しくはコチラから
第5 報酬・料金等の源泉徴収事務|平成18年6月 源泉徴収のあらまし|国税庁
「居住者に支払う報酬・料金等に対する源泉徴収」
コーディングやプログラミング料は?
ただし、Webサイト制作における、
・コーディング
・プログラミング
とか判断が難しいですね。
それらは厳密にデザインと言い難い気もしますが、
Webデザインの集合で括るのであれば、デザイン料の一種として考えても問題ないと思います。
厳密に明言していないので微妙なグレーゾーンな感じですが、
あくまで、源泉徴収の義務は支払側であるクライアントにあるので、
そちらの方針に従いましょう。
他にも、
・サイト更新
・サイト運営、メンテナンス、管理
・制作進行
など、色々ありますが取引先の方針次第です。
まぁ、そんなことより、個人事業主が気を付けておく点は
徴収額がシッカリ国へ納められているか?否か?それが重要
クリエイター側として重要なポイントは、
源泉徴収されたお金がシッカリ国に納められているか?どうかです。
ちゃんと納められているかどうかは年末要請の支払調書で確認できます。
中にはしっかり徴収されたのにもかかわらず、
クライアントがブラックで、実際は源泉徴収したお金を国に納めず、
チョロまかしてたという酷いケースもあります。
年末調整の支払調書は必ず手に入れ、要チェックです!
必ず確認しましょう!!
たいへんためになって助かります。ありがとうございます。
しかし、【例2】源泉徴収分はクライアント負担、報酬手取りが20,000円(消費税別)のまとめのこの計算はどこか違ってるように思うのですが・・・・
★実際振込まれる金額 21,781円 (24,055-2,042)
24055-2042=22013なのですが・・どこかちがってますよね。どれが正しいのでしょうか?
正解おしえてください。
【例2】のケースはクライアントが源泉徴収分を負担し「手取り」が20,000円になりますよ!というケースです。
つまり正確な報酬額から源泉徴収分を差っ引いた額が20,000円。
正確な報酬額は20,000円を0.8979で割った額なので22,274円。
その正確な報酬額である22,274円が売上となりますので、この金額に消費税が発動します。
22,274円に1.08かけた金額、24,055円が請求額になります。
振込み時にクライアントが源泉徴収分だけ差っ引いて振り込むので、
24,055円-2,274円=21,781円となります。
・・・。
あ゛、誤植していましたね(--;)
結果の数字は合ってますが、カッコ内の数字を間違えておりました。
×(24,055-2,042)
○(24,055-2,274)
スイマセン、混乱させてしまいました。
ご指摘ありがとうございました。早急に記事を修正します。
調べものしていてたどり着きました。ありがとうございます。
【例1】の実際振込まれる金額の括弧内の金額が計算が違うよな…
一応確認のためコメントさせていただきました。
ご指摘ありがとうございます、修正いたしました。
こんにちは
アチコチ探して ここが一番細かく丁寧に説明されていて 大体分かりました。
ありがとうございました。
請求する相手がごく普通の個人場合は
源泉税は 計算せずに 消費税だけ 込みか 含まずで請求したらよいのでしょうか。
個人から依頼受けて仕事するもので 初心者で分からず 教えていただければ たすかります。
どーも!
相手は 個人(フリーランス・個人事業主・自営も含んで) / 法人 関係ないですよ。
■源泉税について
源泉徴収は受けた仕事内容によります。下記国税庁のページを参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2792.htm
→ 上記に該当する場合は必須です。
■消費税について
極端に言いますと、消費税は取っても取らなくてもいいです。
しかし、「売上」(経費差っ引いた純利益ではなく)が1,000万円を超えると消費税を納税しないといけません。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6501.htm
→ 単純に取らないと消費税分自腹(おごること)になります。
■さいごに
わからない場合は税務署に行って聞くのが一番いいですよ。
青色申告会(年会費かかる)に入っているなら税理士が常駐してるんでそこで相談するのがベスト。
こんな記事書いててなんですが、個人サイトの記事は鵜呑みにせず参考程度に。
ネットで調べる場合は必ず「国税庁のウェブサイト」を確認し裏を取りましょう。
(Google検索して ヒットしたページの ドメインが「nta.go.jp」)
はじめまして。知りたかった事が解りやすく書いてあり大変助かりました。
これまでずっと消費税と報酬額が請求書上で明確に別れているにも関わらず、消費税込みの金額で源泉税が計算されて引かれていました…。
これは税法上は違法なのでしょうか?クライアントに指摘した場合、どういう対応をしてもらうのが良いのでしょう・・。
通りすがりさんとクライアントの信頼関係の度合いや温度感がわからないので明確なアドバイスはできませんが、
まずはメールでクライアントに「金額なんじゃないんですか?」と明確に示し、ざっくりでいいんで算出過程の式をその後に添えて聞いてみましょう。
この場合ぼかしたり回りくどく抽象的ではなく“明確”に“単刀直入”がベストです。
聞きづらいかもしれませんが、それは日本の悪いところでもあり、相手もそれを見越して利用しても来ます。
今後仕事をもらえるのであれば「損して得取れ」で黙認してもいいかもしれません。
それでもモヤモヤするんで、自分の思う金額と算出仮定の式だけは“明確”に示し、やんわりとたずねてみましょう。
疑問に思うことが聞けない、聞きづらいのであれば今後良好な関係を築くことができません。
特に税金関係は当事者が主張しないと損することになります。
最後に、冷たい言い方になりますがこの記事の執筆者・コメント主は税理士ではないので責任は一切負いかねます。あくまでシロウトレベルの今までの人生経験に基づくアドバイスなので鵜呑みにしないでくださいね。
正義か?自分の感情をスッキリさせたいか?目先のお金か?今後長期的に見てトータルの売り上げか?などなどこれらの政治判断は自分で決断してください。これが個人事業主含め経営者の仕事です。
青色申告会に入ると(年会費とかある)無料で税金や法律相談ができますよ。
あとは税務署に行って相談するのがいいと思います。繁忙期で無ければ結構親身に教えてくれます。